2012年06月02日

震災被災者の間で増加している心血管疾患の増加の原因はストレスだけか

第76回日本循環器学会(2012年3月16日〜18日、福岡)では震災被災者の間で心血管疾患が増加していることが何件か報告された。いずれもストレスを原因に挙げている。ストレスがかっかっていることは間違いないものの、それがすべての原因だろうか。

福島県では心血管イベントにつながる血栓症リスクが依然として続いている
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jcs2012/201203/524103.html

「最後に高瀬氏は、福島県民には過度のストレスがかかった状態が続いており、静脈血栓症のリスクは依然として高いとの認識を示し、長期にわたって医療介入する必要性を強調した。」

東日本大震災直後の心不全は初発例が多くEF保持型が目立つ
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jcs2012/201203/524104.html

「大災害時には、精神的ストレスにより、心不全の発症や心不全による死亡が増加する可能性がある」

東日本大震災後に心不全が有意に増加、ACS、脳卒中も
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jcs2012/201203/524102.html

「東日本大震災では地震に加え、津波の被害が甚大であったことから、被災者のストレスは多大であったと推定される」

心血管疾患と関係があるホルモンにアルドステロンがある。このホルモンは副腎から分泌され、高血圧、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞、心肥大、不整脈、腎不全などを促す。

難病情報センター | 原発性アルドステロン症(原発性とはその場所で発症するという意味)
http://www.nanbyou.or.jp/entry/89

「原発性アルドステロン症はときに小児副腎癌または副腎過形成で生じる。副腎過形成は高齢男性でより一般的にみられ,両側の副腎で活動が過剰となり,腺腫は認められない。」

原発性アルドステロン症: 副腎障害: メルクマニュアル18版 日本語版
http://merckmanual.jp/mmpej/sec12/ch153/ch153f.html

アルドステロンと放射線は関係なくはない。

ICRPのTissue Reactions Report Draft for Consultation(141ページ、393段落)によれば、犬の実験では、21-125 cGy/yrの線量を照射すると5年間で副腎の重量に変化はなかったが、最初の年に機能亢進が見られた。375 cGy超の線量を3〜5年間照射すると、原発性アルドステロン症を発症した。一方、ヒトの視床下部-下垂体-副腎系は放射線に対して比較的耐性があるという。

Tissue Reactions Report Draft for Consultation
http://www.icrp.org/docs/Tissue%20Reactions%20Report%20Draft%20for%20Consultation.pdf

ところが、『チェルノブイリ大惨事が人々と環境に及ぼした影響』(ニューヨーク科学アカデミー、2009年)のTABLE 5.22によれば、チェルノブイリ事故の処理に当たったリクビダートルの間で、アルドステロンの値が上昇している(193.1対142.8)。

『チェルノブイリ大惨事が人々と環境に及ぼした影響』(ニューヨーク科学アカデミー、2009年)
http://www.strahlentelex.de/Yablokov%20Chernobyl%20book.pdf

アンジオテンシンII-アルドステロンが放射線治療を受けている患者に発症する放射線誘導心疾患(RIHD)で重要な役割を果たしているという仮説を立て、予備実験で確認したとする研究もある。

Med Hypotheses. 2009 Mar;72(3):263-6. Epub 2008 Dec 17.
Does angiotensin II-aldosterone have a role in radiation-induced heart disease?
Wu R, Zeng Y.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19095366

研究者には慎重な原因究明をお願いしたいと思う。

太田光征
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posted by 2011shinsaichiba at 19:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康被害 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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