2012年06月07日

東日本では放射能汚染県ほど子どもと大人の病死者数が増加している

※ 大人のデータを追加し、タイトルを「東日本では放射能汚染県ほど子どもの病死者数が増加している」から「東日本では放射能汚染県ほど子どもと大人の病死者数が増加している」に変更した。放射能汚染地図を青森、石川、福井、愛知を含むように文科省第4次航空機モニタリングによるものに差し替えた。(2012年6月9日)

※ 年齢区分に1〜19歳と20歳以上を加え、「考察」を追加した。(2012年7月23日)

※ Fig.7「日本(全国)における乳幼児病死者数の経年変化」を追加した。(2012年7月24日)



福島県で0歳児を除く19歳以下の子どもの病死者数が福島原発事故後の2011年3〜11月に前年同期と比べ増加し、千葉県でも4〜29歳までの病死者数が増加(0〜3歳までは減少)していることが報告されている。

「福島県の子ども」の病死者数について−政府・人口動態統計から分かった事故後の変化−(中手聖一、2012年5月14日)
http://dl.dropbox.com/u/17135518/nakate.pdf
千葉県で子ども病死者数の減少傾向が2011年に逆転(太田光征、2012年05月29日)
http://2011shinsaichiba.seesaa.net/article/272401738.html

子どもの病死者は元々少ないため、これだけの結果をもって放射線の影響だと断定することは難しい。そこで、岐阜・愛知と北陸3県を含む東日本すべてについて分析し、汚染度と病死者数の変化に相関関係があるかどうかを見た。

前回と同様に政府の人口動態統計から死亡者数データを割り出した(総数から「傷病及び死亡の外因」を除いた)。残念ながら2008年、2009年については死因別・年齢別・都道府県別のデータがそろっていないため、2010年と2011年(3月〜11月)だけを比較した。病死者数の変化に比べて人口変動は無視できるので、病死者数を人口で割った死亡率は求めていない。子どもの死亡数の多くを0歳児が占めるので、他の年齢の子どもの挙動が埋没しないように0歳を独立させ(Fig.7参照)、年齢を0歳、1〜4歳、5〜19歳の3区分に分けて病死者数を集計した。大人は子どもより病死者数が多いので、10歳区分で細かく集計した。

使用データ:
人口動態調査 結果の概要|厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html
人口動態統計月報(概数)

日本(全国)における乳幼児病死者数の経年変化(Fig7)


子どもの結果をFig.1とFig.2に、大人の結果をFig.3とFig.4に示す。

一目瞭然、0歳、1〜4歳、5〜19歳の3区分のいずれかで病死者数の対前年比が1.5倍以上の都道府県は、岩手、山形、福島、栃木、千葉、長野の6県であった。明らかに放射能汚染された県に集中している。1.5倍未満では、静岡の1.41倍(1〜4歳)、埼玉の1.36倍(5〜19歳)などと続く。

20-29歳、30-39歳、40-49歳、50-59歳、60-69歳、70-79歳、80-89歳、90-99歳、100歳-のいずれかの年齢区分で病死者数の対前年比が1.2倍以上の都道府県は、宮城、秋田、山形、福島、栃木、群馬、千葉、富山の8県であった。特に岩手の20-29歳における0.56倍を顕著な例として、対前年比が1未満、つまり病死者数が減少した年齢区分もこれらの県に見られる。しかし、病死者数の対前年比の高い県が、秋田と富山(富山も一部汚染されているが)を除けば、これら6県の放射能汚染県に集中していることが特徴である。

福島原発事故後の東日本における病死者数(Fig1)

福島原発事故後の東日本における病死者数(Fig2)

福島原発事故後の東日本における病死者数(Fig3)

福島原発事故後の東日本における病死者数(Fig4)


年齢区分1〜19歳と20歳〜を加えた場合の結果をFig.5とFig.6に示す。

1〜19歳で病死者数の対前年比が1.2以上の都道府県は、高い順から栃木、岩手、福島、長野、茨城であった。

年齢区分を20歳以上でまとめた場合、病死者数の対前年比が1.05以上の都道府県は、高い順から宮城、福島、岩手、山形、茨城となる。

福島原発事故後の東日本における病死者数(Fig5)


福島原発事故後の東日本における病死者数(Fig6)


0歳児を除き、年齢区分を子どもと大人で集約した場合にも、病死者数の対前年比が高い県は、放射能汚染が見られる県に集中している。

放射線によって病死者が増加した可能性が極めて高い。

文部科学省による 第4次航空機モニタリングの測定結果について(平成23年12月16日)
http://radioactivity.mext.go.jp/old/ja/1910/2011/12/1910_1216.pdf
文科省航空機モニタリング(2011年12月16日)


[考察]

この分析の解釈については幾つか注意しなければならない。

死亡率については上げる要因と下げる要因(医療など)の2つが絡み合い、死亡率を上げる要因による影響が死亡率を下げる要因による影響に隠れること、あるいはその逆が、各年齢区分の組み合わせで起こり得る。

また、病死者数は放射線の影響がなくとも変動する。特に、元々病死者が少ない子どもの場合や、人口が少ない都道府県では変動が大きくなる。

例えば千葉県では、乳児死亡率が年々低下している傾向(死亡率を下げる要因が働いている)にあり、同時に変動が当然あって、単調減少ではなく、年度によっては増加している。

平成22年人口動態統計の概況(確定数)/千葉県
http://www.pref.chiba.lg.jp/kenshidou/toukeidata/kakushukousei/jinkoudoutai/h22-gaikyou.html
表5(エクセル:42KB)人口動態総覧・年次推移(乳児死亡率(生後1年未満の死亡)と死産率(妊娠満12週以後の死児の出産)が年々低下)

汚染度の低い秋田県・富山県・長野県などが病死者数の対前年比が高い県のリストに入っていても、人口が少なく病死者数の変動が特に大きいのだから、不思議ではない。

こうした変動による影響を除くには、病死者数の対前年比が高い都道府県グループと低いグループについて、汚染度の比較をすればよい。汚染度の高い都道府県1つと汚染度の低い都道府県1つを取り上げて、病死者数の対前年比を比較しても、あまり確かなことは言えない。

東京は長野より汚染度が高いのに、なぜ長野がリストに入り、東京が入らないのか?

前段のほかに、特に東京は長野より人口が桁違いに多く、また東京すべてが等しく汚染されているわけではなく、東京の中でも線量の高い地域(ホットスポットとなってしまった千葉県東葛地域の隣接地域など)の人口が、線量の低い地域の人口に埋没してしまう効果を考慮しなければならない。逆に、東葛地域を含め、線量の高い千葉県西部・北部は同県の中でかなりの人口を占めている。

千葉県毎月常住人口調査月報(最新) /千葉県
http://www.pref.chiba.lg.jp/toukei/toukeidata/joujuu-geppou/joujuu.html
文部科学省による埼玉県及び千葉県の航空機モニタリングの測定結果
http://radioactivity.mext.go.jp/old/ja/1910/2011/09/1910_092917_1.pdf

空間線量(地上1メートル)が0.1μSv/h超の市区町村:
花見川区
稲毛区
美浜区
銚子市
市川市
船橋市
木更津市
松戸市
野田市
茂原市
成田市
佐倉市
習志野市
柏市
勝浦市
流山市
八千代市
我孫子市
鎌ケ谷市
浦安市
印西市
白井市
香取市
酒々井町
栄町
神崎町
多古町
東庄町
芝山町
全人口の73%


国勢調査 基本集計結果 平成22年 人口等基本集計結果概要
http://www.toukei.metro.tokyo.jp/kokutyo/2010/kt-10index1.htm
第3表 区市町村、男女別人口及び世帯 【Excel】(66KB)
文部科学省による東京都及び神奈川県の航空機モニタリングの測定結果について(平成23年10月6日) | 文部科学省
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/contents/5000/4897/view.html

空間線量(地上1メートル)が0.1μSv/h超の市区町村:
足  立  区
葛  飾  区
江 戸 川 区
八 王 子 市
青  梅   市
日  野  市
あ き る 野 市
檜  原   村
奥 多 摩 町
全人口の21%



今、福島県では福島医大副学長の山下俊一氏が原発事故による健康被害の調査を牛耳っている。福島県が4月に発表した子どもの甲状腺調査の結果によれば、35%の子どもにのう胞が発見された。

甲状腺検診調査結果(2012年4月26日)
http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/240125shiryou.pdf

山下氏は福島原発事故前に長崎やチェルノブイリ周辺でも子どもの甲状腺調査を行っている。それらの結果がふくしま集団疎開裁判の松崎道幸意見書に他の研究結果とともにまとめられているが、いずれものう胞保有率は1%以下で、福島の35%という保有率の異常さが際立っている。しかし山下氏はこれらのデータを積極的に公表しようとしない。

ふくしま集団疎開裁判: 【裁判報告2】35.1%の子どもに「のう胞」が見つかった福島県民甲状腺検査結果(第2回目):3.11以前の山下見解を鏡にして3.11以後の山下見解を写し出した意見書を提出
http://fukusima-sokai.blogspot.jp/2012/05/351.html
ふくしま集団疎開裁判・松崎道幸意見書(2012年5月19日)
http://1am.sakura.ne.jp/Nuclear/kou131Matsuzaki-opinion.pdf

山下氏はさらに、今年1月16日付で日本甲状腺学会会員あてに「小さな結節や嚢胞の所見者については追加調査をするな」という主旨の通知や、震災直後の昨年3月24日にも早々に、日本核医学会の3月18日付通知を根拠に、同学会会員あてに「小児甲状腺ブロックは不要」との通知を出している。

山下俊一氏による追加検査禁止通知(2012年1月16日)
http://onodekita.sakura.ne.jp/sblo_files/onodekita/image/2012013109-f346d.jpg
福島原発事故への対応−小児甲状腺ブロックは不要、放射線の正しい知識を(2011年3月24日)
http://www.japanthyroid.jp/img/info/20110324.pdf
被災者の皆様、とくにお子さんをお持ちの被災者の皆様へ | 日本核医学会(2011年3月18日)
http://www.jsnm.org/japanese/11-03-18

山下氏による健康被害調査は研究材料を得ることが目的であって、健康被害を防止することが目的であるとは思えない。このままでは文字通り殺されてしまう。

福島では真っ先に山下氏を健康被害調査の責任者から降ろすとともに、千葉など他の放射能汚染県でも早急に本腰を入れた健康被害調査を開始する必要がある。

太田光征
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posted by 2011shinsaichiba at 20:45| Comment(5) | TrackBack(0) | 健康被害 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Twitter@sosafune に拡散しておきました。さすが元・東日本大震災緊急支援市民会議の盟友です。ぼくら行動隊にはできない緻密な情報収集作業・分析に感謝です。
Posted by 長船青治 at 2012年06月08日 13:14
長船さん、ありがとうございます。

このデータ、やっぱりか、という思いと、信じたくない、という思いで揺れている方が多いのではないかと思います。
Posted by 太田光征 at 2012年06月09日 11:29
はじめまして。貴重な情報をありがとうございます。
長野県民ですが「汚染された6県」に入っていてショックですorz
長野は軽井沢以外は汚染は少ないと言われていて、なんとなく油断していました。
空間放射線も低いし(県庁発表では)。
でも、途中で感度の悪いガイガーに変えたりされたので「あれ?」と思ったことがあります。
ガイガーを変えられても死者の人数は嘘をつきませんね。
うう、困ったなあ・・・今家を建ててる真っ最中なのでどうしたものか。
Posted by えええ at 2012年07月11日 20:17
メル友掲示板で素敵なメル友探し!
Posted by メル友掲示板 at 2012年07月15日 14:50
「えええ」さん

この分析だけでは放射線による影響だとは断言できませんが、可能性が高く、まともな健康調査の必要性を示すには十分なデータだと考えています。

今回の分析は、放射能汚染県ほど病死者数の増加傾向にある、という点だけが言えそうだ、ということであり、放射線による影響があったとしても、この6県にリストされた県すべての病死者数の増加が放射線によるものだとはいえないでしょう。被害県の特定まではとても言えない。

逆に、これら6県以外でも放射線による影響を受けて亡くなった方もいるかもしれません。

医療などによる病死者数を減少させる効果が、放射線による病死者数を増加させる効果を上回れば、見かけ上は放射線による影響がないことになります。

まずは、まともな検査を国、自治体、本来なら東電、に求めていきましょう。

太田光征
Posted by 太田光征 at 2012年07月16日 23:55
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