2012年07月15日

エネルギー・環境の選択肢に関する論点

エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会(さいたま市、7月14日)で意見表明
http://2011shinsaichiba.seesaa.net/article/281054312.html

全員が一通り話した後、2分間だけ、感想を述べる機会がありました。以下は、他の方が提示された論点に対する私の感想です。いずれの情報も「原発の基礎情報もろもろ」に集約されています。

原発の基礎情報もろもろ
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/221007611.html


中東情勢による影響
→日本のエネルギー業界は中東離れを進めている。商社が(北米の)シェールガス開発に乗り出している。

天然ガスが恒久的に原発を代替できるこれだけの理由
ホルムズ海峡への依存はゼロに近づく
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120319/229950/?mlm
三菱商事・シェル・中国大手など、北米産LNGをアジアへ合弁、事業費1兆円(日本経済新聞、2012年4月12日)
http://www.nikkei.com/access/article/g=9695999693819696E3E3E299988DE3E3E2E6E0E2E3E09F9FEAE2E2E2

風光明媚なところに風車
→洋上風力でよい。東大の鈴木英之教授は洋上風力のポテンシャルを原発数十基分だと試算している。

実験始まる洋上浮体風力 日本の海洋エネルギー期待の星か | ECO JAPAN(印刷用)
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/special/20100712/104217/?ST=print

自然エネルギーによる電力を送電線につなぐと不安定になる
→電力会社の独占体制を崩し、送電線をつなげばよい

20%の省エネ目標はべき論が多い
→東電管内では昨年、18%の節電実績がある
府市エネルギー戦略会議の開催状況(4月) 参考資料3
http://www.pref.osaka.jp/attach/15930/00093425/3_sankou3.pdf

1000年に一度の震災
→沖縄では最近、より大きな津波が来ている
広瀬隆 特別インタビュー「浜岡原発全面停止」以降の課題
http://diamond.jp/articles/print/12199

(燃料焚き増しによる)国富流出(コスト)
→シナリオ文書(14ページの総括表)によれば発電コストは0シナリオでも20〜25シナリオでもほとんど変わらない。

エネルギー・環境に関する選択肢(平成24年6月29日エネルギー・環境会議決定)(シナリオ文書)
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120629/20120629_1.pdf

0シナリオ(「追加対策」ありの場合)、15シナリオ、20〜25シナリオの順に

化石燃料依存度 65% 55% 50%
化石燃料輸入額 16兆 15兆 14〜15兆
温室効果ガス削減比(1990年比) 23% 23% 25%
発電コスト(kWh)15.1円 14.1円 14.1円
省エネ投資 約100兆 約80兆 約80兆

政府の需給検証委員会が5月に出した報告書では、電力9社の燃料費全体が10年から11年にかけて3.6兆円から5.9兆円へと2.3兆円増加し、「うち原発停止による燃料費増」が同じく2.3兆円としているが、原油・石炭・液化天然ガス(LNG)すべての単価が上昇(政府貿易統計)しているのだから、そんなはずがない。

燃料費増加については別に後で詳しく書くつもりですが、簡単に指摘しておきます。

需給検証委員会報告書(第7回エネルギー・環境会議平成24年5月14日)
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120514/shiryo1.pdf
表5-4 燃料費増加の見通し(44ページ)

2.3兆円の内訳は、LNGと石油がともに1.2兆円増、石炭が0.1兆円増、原子力が0.2兆円減。11年は石炭の輸入量、発電用消費量ともに減少(電力調査統計)しているのに、石炭の焚き増し費用が0.1兆円になるわけがない。11年の原発停止によるLNGの焚き増し費用は1.2兆円ではなく約6800億円にすぎない(LNG発電用消費量の増加×輸入単価)。

第27類 鉱物性燃料及び鉱物油並びにこれらの蒸留物、歴青物質並びに鉱物性ろう
http://www.customs.go.jp/tariff/2012_4/data/i201204j_27.htm
財務省貿易統計 Trade Statistics of Japan
http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/happyou.htm
平成23年分貿易統計(確定)
http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/2011/2011_117.pdf
平成22年分貿易統計(確定)
http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/2010/2010_117.pdf

資源エネルギー庁 インフォメーション 統計情報_電力調査統計_調査の結果
http://www.enecho.meti.go.jp/info/statistics/denryoku/result-2.htm
4-(1)汽力発電(一般電気事業者)
4-(3)ガスタービン・内燃力(一般電気事業者、特定電気事業者及び特定規模電気事業者)

需給検証委員会報告書は2012年度の原発停止による燃料費増が3.1兆円としているが、11年の「原発停止による燃料費増」を基にしているので、これも水増し。

韓国が日本の2分の1の価格で液化天然ガスを輸入していることは言い洩らした。

NEWSポストセブン|東電値上げ 丼勘定でバカ高いLNG購入のためと専門家指摘(2012年5月21日)
http://www.news-postseven.com/archives/20120521_109383.html

地球温暖化
→日本の二酸化炭素排出量は世界全体の数パーセント。二酸化炭素を削減したいなら、それは世界の問題、日本は海外で技術貢献すればよい。二酸化炭素排出係数が東電よりも低いPPS(特定規模電気事業者)がある。突き詰めれば、二酸化炭素の排出は、世界の石炭などの利用方法の問題。

二酸化炭素排出係数について:21年度東京都エネルギー環境計画書
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2010/01/20k1t500.htm

エネルギー安全保障
→(時間がなく言えず)ウランはエネルギー量にして石油の数分の1の輸入燃料。エネルギーの種類が多様であればエネルギー安全保障になるとの考えに妥当性はない。ウラン採掘に伴うウラン汚染に周辺住民は苦しんでいる。他国の人間の安全保障を無視して日本のエネルギー安全保障だけを考えることは信じられない。皮肉を込めて言うが、住民が暴動、あるいは正当な抵抗を起こして、ウラン燃料の輸入が滞ったらどうするのか。


太田光征
posted by 2011shinsaichiba at 04:28| Comment(0) | TrackBack(0) | エネルギー・環境に関する選択肢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会(さいたま市、7月14日)で意見表明

エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会(さいたま市、7月14日)に参加し、意見を表明してきました。

エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会
http://www.ustream.tv/channel/ikenchoshukai
意見聴取会 7/14 (土)【さいたま会場】
http://www.ustream.tv/recorded/24016746


Video streaming by Ustream

原発比率15%シナリオがあまりに乱暴な選択肢であること、福島原発事故による放射線被害の真相と放射線による健康影響に関して判断材料が提示されていない問題、核兵器開発につながる使用済み燃料の再処理の是非を選択肢から外している問題などを訴えました。

国家戦略室 - 政策 - 革新的エネルギー・環境戦略 - エネルギー・環境会議
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/archive01.html
エネルギー・環境に関する選択肢(平成24年6月29日エネルギー・環境会議決定)(原稿中の「シナリオ文書」)
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120629/20120629_1.pdf

ちなみに、エネルギー・環境に関する意見聴取会事務局から参加・意見表明に当選したとの連絡が来たのは、7月13日の午前0時48分。同事務局は政府部局ではなく、請け負った業者。夜中まで作業お疲れ様でした。

政府は余裕をもって「国民的議論」の計画を組むべきです。これでは意見表明する者にとって準備する時間が足りない。

以下は用意した原稿のうち、実際に話すことができた部分です。録画が後ほど公開されるとのことですが、未編集で公開されるかどうかは不明。

内容を構成する情報のほとんどは、下記ページに集約されています。

原発の基礎情報もろもろ
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/221007611.html
内部被曝−資料
http://2011shinsaichiba.seesaa.net/article/273231204.html



15シナリオがあまりに乱暴な選択肢だ、政府による原発事故対応と同じく不誠実だ、一言でいって小選挙区制選挙のように選びようがないという点で、批判する立場から、意見したいと思います。

まず、政府は責任ある選択を行うといいますが、事故を起こした側にある国が事故の責任も取っていないのに、なぜ原発政策の責任ある選択ができるのか、ここに根本的な疑問があります。

ドイツは22年までに全廃。地震国の日本は30年までの目標設定。それを決めた後、30 年を目途に検証を行うといいます。あまりに悠長です。

シナリオを考えるための4つの視点が提示されていますが(原子力の安全性・リスク、エネルギー安全保障、地球温暖化問題、コスト・空洞化)、健康被害についてはまったく言及していません。特設サイトも同様で、客観的かつ具体的な情報提供を行うといいながら、健康被害について何の情報もありません。

福島県立医大副学長の山下俊一氏は、福島の子どもたちの35%の甲状腺で嚢胞が見つかったと報告しています。一部を除いて2年後まで検査する必要はないとしていますが、山下氏が2000年に長崎の子供たちを対象に行った検査では、嚢胞検出率は0.8%でした。

シナリオを考える上で福島などでの放射線の影響を理解する必要がありますが、山下氏は市民の求めにも生データを公表しようとしません。政府は公表を迫り、国民の判断材料を提供すべきです。

福島の中手聖一氏による調査に触発されて、政府の人口動態統計から、東日本で原発事故後、病死者数がどう変化しているかを分析しました。

0歳、1〜4歳、5〜19歳の3区分のいずれかで病死者数の対前年比が1.5倍以上の都道府県は、岩手、山形、福島、栃木、千葉、長野の6県でした。放射能汚染された県が多いことが明らかです。大人についても同様の傾向があります。

4つの視点の1つに原子力の安全性がありますが、これは事故対策上の物理的安全性であって、原発の通常稼働による健康影響をまったく考慮していません。シナリオを考えるには、この問題に関するデータも判断材料として必要です。

例えば、米統計学者のグールドらが、米国で閉鎖された原発8基のいずれでも、64キロメートル内の風下では、地元産ミルクのストロンチウム90濃度と乳児死亡率が急減したが、風上や64キロメートル外では全国パターンと変わらなかったことを示しています。

また、グールドの別の疫学調査でも、原発の周囲で乳がんの発生率と白人女性の死亡率が上昇していることが分かっています。

低線量放射線による健康影響のデータも判断材料として必要です。

放射線基準で政府が依拠しているのがICRP(国際放射線防護委員会)、ICRPが依拠しているのが放射線影響研究所ですが、この放影研はついに原爆被爆者の死亡率に関する研究第14報で、固形がんによる死亡リスクに放射線の閾値がないことを認めました。ある市民が厚労省にこの論文の存在を承知しているか確認したところ、承知していると、しかし積極的な公表はしないとの返答だったということです。

あるいは、米原子力規制委員会(NRC)の昨年3月15日の記録で、フクイチ4号機について、「5人が致死量の線量を浴びた可能性がある」とあります。政府や東電からこの件でまったく説明がありません。

このように被害の真相、具体的なデータを示して、放射線の影響をリアルに意識するのでない限り、原発選択肢を考えることなどできません。

シナリオで国民の選択を排除しているのが、核兵器開発につながる使用済み燃料の再処理問題です。

54年3月2日、ビキニ水爆実験の翌日に、「原子兵器を理解し、またはこれを使用する能力をもつことが先決問題である」と演説して、初めて原子力予算が国会を通過したように、また69年の外交政策大綱で「核兵器については、当面、保有しない措置を取るが、核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルは常に保持する」とあるように、原発政策は核兵器を念頭に開始されたものです。

15シナリオでは核兵器開発につながる使用済み燃料再処理を拒否する選択肢を与えず、政府が処理方法を決めるとしています。

先日、これから国民的議論を開始しようとするその前に、「原子力規制委員会設置法」の「附則」で原子力を推進するための上位法の原子力基本法に「わが国の安全保障に資する」という目的が、多くの国会議員にさえ知られることなく、急いで追加されました。

使用済み燃料の選択肢を与えないこと、軍事を意味する安全保障目的を追加したことは、核兵器保有の観点から実に符合するものです。

核兵器を開発したい人にとって、15、20〜25のどちらのシナリオでも構わないわけです、使用済み燃料の再処理ができれば。金食い虫、もんじゅ、プルトニウムを増やす原子炉についての選択肢を与えないのも、符合しています。

原発の再稼働は少しなら認めるが、可能な限り早くなくしたい、核兵器開発につながる再処理はさせたくない国民は、15シナリオを選択できるでしょうか。

なぜ中間的選択肢に見える15シナリオが5とかそれ以下ではなく、核兵器開発につながる可能性と抱き合わせなのか。これでは20〜25シナリオと本質的に変わりません。

政府はメディアの世論調査などもふまえ、総合的に判断したいとし、データ数としては一番膨大になると思われるパブコメについても、その結果をどのように扱うのか、事前に明確に決めていません。「討論型世論調査」についても同様で、そこで使われる学習資料はまったくのブラックボックスです。

例えば、0シナリオを選んだのが、20パーセント、15シナリオが40パーセント、20〜25シナリオが同じく40パーセントだとしましょう。原発維持の声が多数だと判断できますか。

15シナリオの40パーセントの方ほとんどすべてが、20〜25シナリオと比べ、断然0シナリオが好ましいとすれば、実質的な原発ゼロ派は過半数の60パーセントに達するわけです。

こうした数学的問題は、単純小選挙区制選挙でも見られ、コンドルセのパラドックスとして知られています。最下位の得票の候補者が実は有権者から最も広範に好まれている、ということがあるのです。脱原発派が10人、原発維持派が1人、立候補した場合を想定してみてください。単純小選挙区制ではまったく民意を測定できません。今回のシナリオ選択もまったく同じ方式なのです。

シナリオ文書では、関心の高い電力需給の話は出てきません。特設サイトに埋もれてはいますが。しかも今夏の需給予測はあっても、実績については記載されていないのです。

例えば関電管内、今夏は大飯原発3、4号機分以上、昨夏より節電されています。これは関西学院大学の朴勝俊(ぱく すんじゅん)准教授が昨夏の実績から、最大需要・最高気温の1次モデルを示しましたが、それとの比較によるものです。

実際、関電も、7/7の日経に、「気温と比較してもかなり需要が落ちている印象」と語っています。最大の電力不足に陥るとされた関電でこの実態です。

電気が足りなくなると心配して15シナリオを選択される国民がいらっしゃると思いますが、15も必要でないことは明らかです。15シナリオはあまりに粗雑です。

太田光征
posted by 2011shinsaichiba at 00:21| Comment(2) | TrackBack(0) | エネルギー・環境に関する選択肢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする