この点で、独ミュンヘン環境研究所のアルフレッド・ケルプラインによる研究が画期的です。
Säuglingssterblichkeit in Japan nach Fukushima.
http://www.strahlentelex.de/Stx_12_622-623_S12-14.pdf(ドイツ語オリジナル)
無限遠点: 放射線防護専門誌「放射線テレックス」12月号 2
http://donpuchi.blogspot.de/2012/12/12_19.html(日本語)
http://www.strahlentelex.de/Infant_mortality_in_Japan_after_Fukushima.pdf(Revised English Version)
http://ameblo.jp/manyblueroses/entry-11481008473.html(英語改訂版の日本語訳)
チェルノブイリ原発事故と福島原発事故の後、ドイツと日本のいずれでも事故から2カ月後と9カ月後の2時点で乳児死亡率が増加し(ドイツではさらに1年7カ月後にも)、独バイエルン地方と日本のいずれでも事故から9カ月後に出生数が減少しています(その前後の月で異常は見られない)。

図1:日本における月ごとの乳児死亡率の推移(曲線は回帰線)
縦の線は2011年3月の福島原発事故の時点

図2:日本における月ごとの乳児死亡率の標準化残差(傾向からの逸脱)
横の点線は標準偏差の範囲

図3:西ドイツにおける月ごとの早期乳児(生後0〜6日)死亡率の推移
縦の線は1986年4月末のチェルノブイリ原発事故の時点

図4:西ドイツにおける月ごとの早期乳児死亡率の標準化残差
横の点線は標準偏差の範囲
乳児死亡率だけを眺めると(図1、図3)、1986年や2011年だけでなく複数の年で一時的にピーク(回帰線からのずれ、傾向からの逸脱)のある月が見られるものの、傾向からの逸脱を標準化残差で求めるとこの逸脱が絞られ(図2、図4)、さらに原発事故発生時点を基準とする逸脱発生の時間的パターンが日独の間で類似しているというわけです。
ケルプラインは1997年にチェルノブイリ後の西ドイツにおける周産期死亡率に関する研究を発表しました。牛乳中の放射性セシウムの濃度測定から、女性体内中の同濃度を計算したところ、86年中頃と87年4月末にピークが見られたとしています(図5)。
Körblein A, Küchenhoff H. Perinatal mortality in Germany following the Chernobyl accident. Radiat Environ Biophys. 1997 Feb;36(1):3-7.
http://www.alfred-koerblein.de/chernobyl/downloads/KoKu1997.pdf
Cesium concentration in milk (dots) and in the female human body (solid line) afer Chernobyl (Alfred Kerblein)

図5:チェルノブイリ後の西ドイツにおける牛乳中(実測)および女性体内中(計算)の放射性セシウム濃度
そこで、ケルプラインはチェルノブイリ後の西ドイツにおける9カ月後(87年2月)と1年7カ月後(87年11月)の早期乳児死亡率の増加ピークは体内セシウム濃度の2つのピークで説明でき、チェルノブイリ後の6月およびフクシマ後の5月における乳児死亡率のピークもタイムラグの類似性から放射線が原因である可能性が高いとしました。
太田光征
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